地域で見守ってきた供たちの遊び方や学びの環境は大きく変わりました。
最近では、スマホやパソコンで、遊んで学べるプログラミングなど知育玩具の普及が始まっています。
そんな中で、「木育(もくいく)」を心の栄養に、おもちゃを媒介として環境保護への意識向上につながる活動を繰り広げてこられた、東京おもちゃ美術館館長の多田千尋さんのお話や、その木育精神を伝承しているような、デザイン的に豊かな発想を感じさせてくれる、木の紙でできた玩具について、ズームさせていただきました。
東京おもちゃ美術館館長の多田さんは、なぜ、赤ちゃんから子供(特に6歳ぐらいまで)に木育が必要なのか、こう述べています。
“0歳から6歳のあいだが、遊びの天才の時期なんです。
次が6歳から、まあ頑張って12歳くらいかな。これが人生の中で遊びの黄金時代。
それで0歳から6歳がスーパー黄金時代です。この時に遊びの天才たちに天才振りをはっきさせるようなおもちゃじゃなきゃ駄目なんです。
天才たちを腑抜けにするような道具を近づけてはいけない。
じゃあ腑抜けにさせるものってなにかっていうと、この天才たちが手も使わなければ、頭も使わない、おもちゃのほうでレールをひいてくれるようなものです。
そういうものって天才たちが腑抜けになっていくんです。
ところが、積み木だとかレゴブロックみたいなものって、なんの手厚いケアもしてくれない。
自分で手を伸ばして、さて何作ってやろうか、どんな大きさの家作ろうかってね。
道具のほうに自分から攻めていかないと。楽しさは相手からやってきませんから・・・・”
そして、おもちゃというのは、人と人をつなぐ接着剤で、コミュニケーションを豊かにするための「生活道具」ではないかと、以下の企画の中でも、子供時代の遊びの大切さを指摘して
“この間、ナイトミュージアムやったんです。
記念すべき第一回は、高校生たちが100人くらい集まってきた。
全員、発達障害の高校生でした。親御さん20人、教員30人。総勢150人です。
その高校生たちが底抜けに面白いんです。
例えば、ここの部屋でずっと2時間遊ぶことができる子もいる・・・で、その子をおもちゃ美術館全部楽しませようとすると、1年に一回やったとしたら12年かかっちゃうんです。
ずっと集中して一つの部屋で遊ぶんですね。
でもその時に、校長先生がとてもいいこと言ってくれました。
「多田さんね、発達障害や自閉症の子どもであっても、小さいときにいろんなこどもたちとたっぷり遊んでいる自閉症のこどもと、いつも一人でぽつんといた自閉症の子では全然違うんだよ」って。
そして、「人間との関わり力が全然違うから、0歳から6歳の遊びって大切で、発達障害の子どもほどこういうところで遊ばなければ駄目だ!と今日思いました」って言ってくれてね。とても嬉しかった。・・・・・”
多田さんは、世代を超えて、おもちゃを「楽しむための生活道具」と位置付けた上で、企業参加の「木育広場」をおもちゃ美術館監修で、全国的に展開されて来ました。
他にも、木育に関連する、日本人でアートディレクターの長谷川さんが考案された、木の紙スナップ(国産材を薄くスライスして紙と貼り合わせた木の紙の素材を使用)についても、ご紹介したいと思います。
そのおもちゃは、一枚の木の紙から動物を形作れるキット(スナップでパチパチ留める)で、折り紙を折るような感覚を持つことができ、小さな子供から高齢の方まで遊べる、木と紙が融合した軽くてオシャレに進歩したおもちゃです。
島国日本の伝統を感じさせてくれる、そんな素敵な木の玩具が全国的に普及されれば、様ざまな障害を持つ子供たち(文化的な活動を得意とする子供たちにも)や、介護施設でのリハビリにも役立ち、また楽しめる「生活道具」として喜ばれるのではないでしょうか。
高度な情報がシステム化された環境の中で、自然である人間の本質と向き合いながら成長の基盤を固めるために、子供時代に木の玩具を使った自然に接する遊び方が、創造力を高める頭の使い方と心身に良い影響を与えると信じて、子供の教育、遊びに貢献する、「木育」にこれからも注目が集まることを、ぜひ期待したいと思います。