周りに同調することに必死で、個性を殺してしまっている子どもが多い中、親として、教育者としてどのように子どもと向き合うべきでしょうか。急速に多様化する社会でも力強く生き抜く術を育むために、個性重視社会の代表であるカナダの子育てを参考に、今一度、個性の伸ばし方に注目します。
多民族国家のカナダの子育て、教育はとにかく「個性」を大切にします。「皆がちがっていて当たり前」なのだから、子どもたちをありもしない「普通」という枠に当てはめるより、「自分らしさを魅力的に発揮する力」を育てるほうが、時代をリードできる力強い人材へ成長するという認識があるからです。
「出る杭は打たれる」という風潮は日本ではいまだに根強く残っています。皆と足並みをそろえて、でしゃばらず、和を乱さずというのは一見美徳のようですが、芽吹いたばかりの子どもたちの個性を摘み取るどころか自己判断力、決断力、行動力の成長を鈍らせてしまいます。
「個性」とは、その子自身に本来備わっている「情熱」や「表現力」です。自分のやりたいことができない、表現できないというのは成長期の子どもにとって想像以上のストレスです。自分は周りから受け入れてもらえないという自己否定にもつながり、社会にうまく順応できないという事態も起こりえます。
狭いように思える日本も年々グローバル化がすすみ、社会はより複雑になっていきます。現代の子どもたちはグローバル社会で生きるために、自分にしかない「個性」という名の強みを高めていく必要があるのです。
自分らしさを嬉々として全面に押し出す積極的な子もいれば、周りの様子をうかがい中々自分らしさを出せない内向的な子もいます。また大人の対応一つで、子どもの自己表現のスタイルは良くも悪くも変化します。
大切なのは「自分らしくて良いんだ」という自信と「うまく表現できなくても大丈夫だ」という安心感をもたせてあげることです。
これは決して難しいことではありません。日々の子どもとのコミュニケーションの中で育んでいけるものです。いくつかの具体例をご紹介します。
子どもの個性が自分の望んだものではなかったとしても、まずは受け入れましょう。「何でそんなこと聞くの?」「恥ずかしいからやめなさい」「馬鹿らしい」などといった大人の否定的な反応は子どもに罪悪感・羞恥心・疎外感を植え付けてしまいます。
まずは、「あなたはこれが好きなのね」「こんな風に表現するのが得意なのね」と肯定し理解を示しましょう。すると子どもは認められたいという承認欲求が満たされ、楽しく自信をもって表現し続けます。
表現方法がマナー違反、倫理違反だった時は、受け入れてからどうやったらその子も周りの人も良い気持ちでいられる表現ができるか一緒に相談してみてください。そうやって子どもは自分の個性を社会の中で上手に使う方法を学んでいきます。
カナダでは、子どもや生徒に質問をされた時によく「それは良い質問だね!」と褒めます。たとえそれが深い学問的な質問ではなく、「どうして手でご飯を食べちゃいけないの?」というような質問でもです。
「気がつく」ということは、その子がちゃんと周りを見て、考えている証拠です。より多くの「気がつき」がある分野こそ、その子の個性が発揮される場所なのかもしれません。
時に子どもは難しい質問をします。親でも自分の興味がない分野なら真剣に答えるのが億劫になることもあります。カナダでは年齢に関係なく「知らない」「わからない」と言うことをあまりネガティブに捉えません。
「今から学べばいい」という前向きな学びの姿勢があります。移民が多く、義務教育という概念もないので学歴は人それぞれという認識が強いからかもしれません。
日本では知らないことを恥じる傾向がありますが、子どもの質問の答えが分からなければ一緒に調べましょう。
今はインターネットでいくらでも調べられますし、図書館に行けば年齢に合わせた辞書もたくさんあります。発達期の子どもは「自分と向き合ってくれる人がいる」という気持ちと、「わからなければ調べることができる」という認識を持つことで、個人の知的欲求を自主的に満たす、つまり学習意欲が育まれるのです。
個性とは「自分そのもの」であり、自らを魅力的にプロデュースする最大の強みです。
これからのグローバル社会では周り流されずに、自分の力を信じて行動する力が求められます。皆と同じようにふるまって生きることを教えるより、自分の個性をどうやって周りに貢献するかに焦点を置いてみませんか。