共働き世代の子育て

共働き世代の子育て

高い需要にもかかわらず慢性的な人材不足の保育現場では全ての親御さんのニーズに合った対応は年々難しくなっています。
理由がなければ預けてはいけないという風潮も親御さんには重い鎖です。それぞれの家庭環境に合った子育ての新しい選択肢として「学生ベビーシッター」に注目します。

わが子を他人に預けるという事とは

カナダの親御さんは複数人のベビーシッターの連絡先を確保しています。小学校が始まる5歳以前に保育園や託児所に預けるとなると利用料が大変高額となり、加えて競争率が高いので、出産後すぐに予約をしないと入れないということもあります。

したがって、賃金が安めのシッターを個人的に探して依頼するというスタイルが浸透しています。

働いている間に預けるというのが最も多い理由ですが、大学の授業がある、デートや美容院、パーティーに行く、病院の検査・診察がある、一人になる時間がほしい、など様々です。どんなに可愛いわが子でも子育てにはエネルギーが必要です。

疲れてイライラしたまま子どもといるより、何時間かの息抜きをして、愛情と関心がいっぱいの時間を子どもと過ごすほうが、より質の高い家族関係が築けるという意識があるのです。

ニーズに合わせた預け先の必要性とは

一方で日本では私的・娯楽的理由でわが子を他人に預けるという行為は未だマイナスにとられます。
特に幼少期は親と離れがたい子も多いので、「なつかなくて迷惑をかけるかもしれない」「あんなに泣かせてまで出かけるなんて親失格だ」といった強迫観念にも似た責任を自らに課す親御さんも多いです。

しかしながら、現代の日本において、体力・気力・時間の全てを子どものためだけに費やす事は難しくなっています。

社会の構造が複雑化し、他者との関わり方、働き方、暮らし方があまりにも多様化しているので、個人の能力の容量と使い道を分配しないと上手く社会に溶け込めないのです。

公営の保育所や託児所は慢性的な人材不足で空きが少なく、一時保育は子どものストレスが大きい。常に身内に預けるのも心苦しいし、人柄も知らないベビーシッターを家にいれるのは不安。

心身ともに健康な子育てを保つためにも、臨機応変に対応でき、家計を圧迫せず、信頼できる、そしてなにより子どもにストレスレスな時間を提供してくれる、「助け舟のような存在」が求められています。

見直すべき「学生ベビーシッター」

「小さい時、近所のお姉ちゃんが遊んでくれた」「従弟のお兄ちゃんに宿題を見てもらった」という経験をもつ親御さんもいるのではないでしょうか?

欧米ではベビーシッターは学生のアルバイトの代表であり、早い年齢から始められる仕事の一つです。

基本的にはシッターが自宅に赴き、親が外出中の子どもの世話、子どもが就寝中の家の番をお願いします。年齢や能力によっては家事代行やチューターを同時に頼むこともあります。

カナダでは11歳になるとカナダ赤十字認定のトレーナーから、ベビーシッターになるためのワークショップを受けることができます。

ワークショップ開催の目的は、地域の中で有能なベビーシッターを増やす事、そして未来の責任ある保護者を育成する事にあります。参加者は基本的な応急処置法、年齢に合わせた遊び方など、シッターとして身に着けておくべき最低限のスキルを学びます。

最後に、確認テストを受け、75%以上取れば合格し修了書をもらえます(参考1)。
ワークショップに参加しなくてもシッターはできますが、修了書はいわば信頼材料の一つであり、シッターにとって自信とプロ意識の象徴です。

本来、子育てに資格は必要ありません。重要なのは責任を持って子どもを守り、愛情ある時間を提供できるかどうかです。

中学生・高校生もまだ子どもですが、年下の子の面倒を見るという行為は彼らの自立心を大きく成長させます。もちろん日本で18歳以下の学生にシッターを頼むには労働基準法をしっかり守ったうえで、人格や責任力を見極めて依頼する必要があります。

わが子の安全性を念入りに確認したうえで預けるのは、保育園や託児所を選ぶ際と同様です。まずは気心知れた親戚の子ども、近所で評判の学生や、友人のお子さんに試験的に頼んでみるのはいかがでしょうか。

子どもも自分も大切に。新しい選択肢を開拓しよう。

自己犠牲の子育ては子どもにも親にも暗い影を落とします。
自分を追い込みすぎて息もできないような親を見るのは子どもにとっても辛いことなのです。
かといって知らない大人に預けられるのも「置いていかれた」という恐怖や悲しみを残しかねません。

新しい選択肢を選ぶのは勇気がいりますが、子どもを預けることを悪と思わずに、選択肢の一つとして「学生ベビーシッター」も視野に入れてみませんか。

(参考1)英語訳:CANADIAN RED CROSS